Profile
-プロフィール-
井上 真帆 Inoue Maho
1984年、東京生まれ。小学校3年生まで群馬で育つ。
富山テレビ(フジ系列)で記者・アナウンサー・ディレクターを務めた後、2013年にフリーアナウンサーへ転身。NHK BS1「BSニュースキャスター」、NHKラジオなどを経て、現在はNHK Eテレ「こども手話ウイークリー」
「お昼の手話ニュース」ナレーションを担当。ホリプロ所属。
ドキュメンタリー番組の取材をきっかけに「手話」に関心を持ち、育児で「ベビーサイン」に触れたことで「言葉を超えて伝わる」感覚を実感。「視覚・聴覚・体感覚を活用した場の一体感を生む表現」を得意とする。
報道・番組制作の経験に加え、心を通わせる場づくりが評価され、教育分野での活動も広がる。警察大学校特別講座で講師を、毎日新聞「記者トレ」ではファシリテーターだけでなくプログラム全体の運営・新規コンテンツ開発も担う。ホリプロと東京理科大学が共同開発した新教育プログラム「ホリプロのラジプロ」にも携わる。
司会進行や講座を通じて、言葉を超えたコミュニケーションの可能性を広げている。

MY STORY
声の振動が、心をつなぐ
小さい頃から、舞台が好きでした。客席と舞台が呼吸を合わせる瞬間、空気がひとつになる感覚がたまらなく心地よかったのです。
そんな私が今、「空気がひとつになる場」を創ることを大切にしている理由 ーーーその物語に、少しだけお付き合いいただけたら嬉しいです。
Episode1
コンプレックスー声に疑問を持った日々
中学生の頃、友人関係の中で「心地よさ」が消えた時期があります。
些細なことがきっかけで、友達の輪から外されるようになったのです。
「あなたの声、暗いよね。」
友人から伝えられた心ない言葉。母からも「もっと愛想よく話しなさい」と言われ、次第に、自分の声が嫌いになっていきました。明るく、弾むような声を出せない自分は、きっと人に受け入れられないのだと感じるようになったのです。
高校時代、接客のアルバイトを始めた私は、大きな声を出せば場が盛り上がることを学びました。
でも、それは「作った声」。
無理して明るい声を出し続けるうちに、どこか自分がすり減っていくような感覚に襲われました。嘘の声を出すことは、想像以上に苦しかったです。

Episode2
本当の声を活かしたい
舞台が好きだった私は、ふとしたきっかけでオーディションを受けました。演技審査で台詞を読み上げると、ある審査員が言いました。
「あなたの声、とてもいいね。」
ずっとコンプレックスだった声が、初めて肯定された瞬間でした。そのとき、私は気づきました。
大事なのは、明るさや高さではなく、「嘘のない声を出すこと」なのだと。
「この声を活かせる仕事がしたい。」そう思い、アナウンサーの道を志しました。
富山テレビ(フジ系列)で8年間、記者・アナウンサー・ディレクターなど、制作全般に携わってきました。
その中で、ある方との出会いが転機となります。

Episode3
言葉を超えたコミュニケーションの可能性
富山で取材したドキュメンタリー番組の中で、耳が聞こえない彫刻師の方と出会いました。
言葉を交わさなくても、彼の想いが伝わってくるのです。 彼もまた、私の言葉を「聴いている」ようでした。
「耳が聞こえない人は、どんな広い世界を感じているんだろう?」
その問いに導かれるように「音声言語のないコミュニケーション」の可能性に心を奪われ、手話やベビーサインを学ぶようになりました。
純粋な「伝えたい」気持ちは、まるで波紋のように届く。
言葉がなくても、人は表情や動き、そして空気の流れで思いを伝えられる。伝えたい気持ちがあれば伝わるのだと実感しました。

Episode4
息を合わせてつくる「場」
2019年からはNHK手話ニュースのナレーションを担当し、現場で手話と向き合う中で「呼吸を合わせるように伝えること」の大切さを学んできました。
今、私は「声」と「手話」、そして「空気の流れ」を大切にしています。言葉だけではなく、場の空気が巡ることで、伝わるものがある。
話し手、聞き手、そしてその場にいるすべての人の呼吸が、そっと重なり合う。私は、その「場」を作ります。
誰かの呼吸にそっと寄り添い、心が通い合う瞬間を生み出すこと——それが、私の役割なのだと思っています。
